ピーガガガの記憶とアスキーネットPCS、そして幻のNTTホスト

1992年3月25日、アスキーネットPCSがサービスを終了しました。

「パソコン通信」とは何か? といえば、1980年代半ばからインターネット普及前夜までを支えたネットワークのことです。当時の通信環境は今の常識ではまったく考えられないものでした。主流だったモデムの通信速度は1200bpsや2400bps。画面に文字が表示されるのをゆっくり目で追えるほどのスピードで、小さな画像ファイルを1枚ダウンロードする間にカップ麺ができてしまうレベルです(笑)

それに加えて、当時の通信費もけっこうなハードルでした。今のような定額制ではなく、つないだ時間だけ電話料金がかかる完全従量制。3分10円の市内通話ならまだしも、市外のホストコンピューターにつなごうものなら通話料は跳ね上がります。月末に数万円の請求書が届き、親からカミナリを落とされる中高生が続出したものです。

そんな過酷な(?)通信環境のなか、とくに初期のころのユーザーから絶大な人気を集めていたのが、各地域のNTT営業所が開設していたホスト(BBS)でした。なんといってもホストの利用料が無料で、近場の営業所なら市内通話料金だけで遊べたのです。おもに学生やライトユーザーたちのオアシスとして、連日大盛況となっていました。

しかし、そこで「待った!」がかかります。

巨大な通信インフラを持つNTTが無料でサービスを提供し続ければ、民間企業による有料サービスの成長を阻害してしまうのではないか:

こうした「民業圧迫」の批判を強く浴びることになり、大人気だった各NTTの無料ホストは、1989年6月ごろに一斉に閉鎖されるという劇的な最期を遂げました。

そんな群雄割拠のパソコン通信黎明期において、1985年にいち早く実験サービスを開始し、国内のパイオニア的存在だったのがアスキーネットです。NECの「PC-VAN」や「NIFTY-Serve」といった巨大ネットワークが台頭してくるなかでも、アスキーネットはとくにホビー色やマニアックな空気が漂う独特の立ち位置を築いていました。PCS(Personal Communication Server)はそんなアスキーネットが提供していたサービスのひとつで、おもにコアなユーザーたちに深く愛されましたが、時代の波のなかで1992年のこの日に運用を終えました。

その後の流れは存知のとおりです。1995年のWindows 95発売と、夜23:00から翌朝8:00まで通信費が定額になる魔法のサービス「テレホーダイ」の登場を機に、世の中はまったく新しい「インターネット」へと急速にシフトします。

各社が提供する閉じたネットワークから、世界中がWebでつながるオープンな世界へ。パソコン通信の時代は終わりを告げましたが、モデムの「ピーヒョロロロ、ガガガ」という接続音とともに、深夜にひとりでこっそり画面に向かっていたあの熱気は、今思えば不思議な魅力がありましたね。

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